歯周病と次亜塩素酸

次亜塩素酸と歯周病の関係

むし歯菌や歯周病菌の殺菌作用を期待した機能水として、次亜塩素酸を主体とする「パーフェクトぺリオ」というものがあります。パーフェクトぺリオについては、マスコミ等で取り上げられたこともあり、患者さんや一部の歯科医療従事者から注目されたこともありました。しかしながら、学術的な裏付けに乏しく、その有効性や安全性は確立されていないのが現状です。当院では、臨床で使用するには不適当と判断し、パーフェクトぺリオを使用した治療は行っておりません。

パーフェクトぺリオについては、日本歯周病学会が以下のような見解を示しております。

「パーフェクトペリオ」(以下PPW)は次亜塩素酸(HClO)を主体とする殺菌作用を期待した機能水の一種である。PPWについては、2007年頃より、東京医科歯科大学う蝕制御学分野のグループや明海大学歯内療法学分野のグループより、主にう蝕病原細菌や実験的バイオフィルムに対する抗菌効果1-7)、根管内のスミヤー層や細菌の除去効果など8-12)について報告している。歯周病に関する研究としては、東京医科歯科大学歯周病学分野より2009年に基礎的な研究について学会発表がなされているのみである13)。この報告では、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansに高い有効塩素濃度(600pm)のPPWを作用させると殺菌効果があることが示されている。一方で、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1)およびヒト単球由来細胞(THP-1)にPPWを作用させたところ、生存細胞数が減少したが、その傷害性は同程度の濃度のクロルヘキシジンや次亜塩素酸ナトリウムと比較しても同じかそれよりも低いものであるとしている。しかし、これらの研究はいずれも基礎的な研究で、また査読制度のある学術雑誌の論文はわずかであり、ヒト応用に関し安全性と有効性が高いレベルで示されているわけではない。また、臨床的研究についての報告はこれまでにない。

PPWを用いた歯周治療については、最近マスコミ等で取り上げられ、国民から注目されている。そして、この方法に対する期待が、患者だけでなく一部の歯科医療関係者にもみられるようである。しかしながら、現在PPWを使用している歯科医師が、PPWの使用に際して必要な倫理的事項(大学や学会などへの倫理申請、患者への説明文書の提示と同意書の取得など)に対して、どのように対処されているのかは不明である。PPWを販売していたパーフェクトペリオ(株)では、現在、販売を一時中止した上で、PPWの生成装置について「新医療機器」としての申請を準備中とのことである。同社ではラット等を用いた急性経口毒性試験や皮膚刺激性試験や細菌を用いた変異原性試験などで重篤な問題を生じることがなかったと報告しているが、今後、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に則って臨床研究の実施なども計画しているとのことである。

以上より、現状でのPPWの歯周治療への応用については、研究途上の段階で科学的根拠が十分であるとはいえず、日本歯周病学会としては安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきであると考える。(2010年5月)